「純愛」という大きな、そして重要なテーマをコンセプトにした、SPICY CHOCOLATEのアルバム「渋谷純愛物語」。 2014年に第一弾がリリースされ、15年に「渋谷純愛物語2」、16年に「渋谷純愛物語3」とリリースを重ね、“二人で feat. 西内まりや & YU-A”や、“Last Forever feat. 加藤ミリヤ & SKY-HI”など、確かなラヴ・ソングをリスナーに提供してきたこのシリーズ。 その三部作に収録された楽曲を中心にしながら、新曲となる“君のことが好きだったんだ feat. BENI, Shuta Sueyoshi (AAA) & HAN-KUN”や、純愛シリーズ以前に制作された“ずっと feat. HAN-KUN & TEE”や、“信ジルモノ feat. YU-A, AK-69 & HAN-KUN from 湘南乃風”なども収録し、SPICY CHOCOLATEの生み出す「純愛」の世界を一枚に纏めたベスト盤「スパイシーチョコレート BEST OF LOVE SONGS 」がリリースされる。 今回のベスト盤について「『渋谷純愛物語』三部作の、その集大成になったと思いますね」と話す、SPICY CHOCOLATEの中心人物であり、楽曲の総合プロデュースを手がけるKATSUYUKI a.k.a. DJ CONTROLER(以下、括弧内の発言はすべてKATSUYUKI氏による)。その意味でも、タイトルにも冠されたように「純愛」という、まっすぐな感情、曇りのない気持ちを、この三部作では丁寧に表現し、大きなテーマにしてきた。



「レゲエはレベル・ミュージックと、ラヴ・ソングの両輪で動いてると思うんですね。 自分は20代の頃はレベル・ミュージックの部分を形にしてきたんで、次は『ラヴ』を表現したいなって。 そして、ドロドロな恋愛にフォーカスするよりも、ストレートで、ピュアな恋愛の方が美しいと思うんですよね。 確かに僕も若い頃は『よこしま』な恋愛の形も表現してきましたが(笑)、年を重ねて、色んな出会いや別れを経て、自分が生きてる意味、「生」について、深く考えるようになったんですよね。 その時に、万人に向けるような大きな愛の表現はまだ難しいけど、人と人との愛、近くにいる人を愛すっていう表現や言葉は、スゴく重要だと気づいたんですよね」



SPICY CHOCOLATEを以前から知る、またはレゲエ・サイドから注目していた人間にとっては、彼らは渋谷を代表するレゲエ・サウンドであり、ハードなダンス(イヴェント/パーティ)で、夜を沸かせてきたというイメージがあり、その彼らが「ラヴ・ソング」をテーマとして掲げた事は、大きな驚きでもあった。 しかし、振り返って考えれば、そういったタフな表現に加えて、ラヴやメロウも確実に彼らのサウンドには存在してた事も事実だ。




「SPICYな部分と、CHOCOLATEな部分。どっちもあるのが、SPICY CHOCOLATEのスタンスなんですよね。 それに、同じことをやり続けるのはあまり性に合わないタイプで、どこかで人を驚かせたい、今までと違うことをしたいっていう遊び心みたいなモノがあって。 その意識の上で、ラヴ・ソングとダンス・ホールを組み合わせた“君に会いたい feat.青山テルマ & RYO the SKYWALKER”や、“信ジルモノ feat. YU-A, AK-69 & HAN-KUN from 湘南乃風”ような楽曲を制作して。 その評判が良かったんで、よりメロウで、ど直球のラヴ・ソングを作ってみようと思って制作に取り掛かったのが、“ずっと feat. HAN-KUN & TEE”だったんですよね」



2012年にリリースされた、SPICY CHOCOLATEの代表曲とも言えるこの楽曲は、瞬時に大ヒットを起こした訳ではなく、じわじわと売れながら徐々に注目を集め、14年にCMに起用されその人気に着火、配信チャート19冠を達成するなど、息の長い、そして幅の広いヒット曲になった事は、周知の事実だろう。



「完成した時、スゴく感触は良かったんですよ、僕の中で。 ただ、リリースされた時は、チャートのトップ10には食い込んだけど、それ以上に大きなチャート・アクションを起こすまでには至らなくて、世の中と自分がいいと思うものは、中々噛み合わないんだなって。 だけどその2年後に、DOCOMOさんのCMに起用されて、そこからまた新しい反響が起きて、結果は配信総数120万ダウンロードを超えるヒットになって。 あの曲がSPICY CHOCOLATEを沢山の人に聴いても貰えるきっかけになったし、自分へのチャレンジとしても、あえてその路線をもっと掘り下げてみようと思って始めたのが、「渋谷純愛物語」シリーズだったんですよね。 リスナー層も広がって、若いリスナーが増えた事もあって、そういった恋愛をし始めの10代の子達は、心が純粋なんだろうなって。 だから、告白するにしても、好きな人と一緒に過ごすにしても、ためらったり、不安になったり、希望を持ったり、そういうピュアな部分が心にあると思うし、そういった素直な気持ちや感情にフォーカスした、純愛をテーマにした楽曲を作ろうと思ったんですよね」



そう話すとおり、「渋谷純愛物語」シリーズは、愛する人とハートが繋がるようなイメージであったり、心を豊かにするような、普遍的とも言える恋愛の形が表現されてきた。



「確かにレゲエでは、不良っぽい内容や、色恋を歌う曲も多いけど、今のジャマイカだと、『そういったセックス、ドラッグ、バイオレンスだけでいいの?』っていう疑問を元に、もっとリスナーにいい影響を与えるような曲を作ろうというアーティストも増えてきていて。 自分にとっても、純愛をテーマにするのは、そういう意識があるんですよね。 アーティストとして、自分の発する言葉や表現には影響力があると思うし、そこに責任もある。 だから多くのリスナー、そして若い子達が自分の音楽を聴いてくれるんだとしたら、その人達が正しい方向に進めるような楽曲を作らなきゃいけないと思ったんですよね。 もっと言えば、自分の表現で世の中や日本を良くしていきたいと思ったんです」


後編へ



高木 "JET" 晋一郎◇TAKAGI "JET" Shin-ichiro